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法人設立後、初めて従業員を雇うときに必要な手続き|社会保険・労働保険を社労士が解説

会社を設立し、初めて従業員を採用するとき、

 

「社会保険や雇用保険の手続きをしなければ」

 

と考える経営者の方は多いと思います。

 

もちろん、これらの手続きは必要です。

 

しかし、実際にはその前に決めておかなければならないことがあります。

 

それが、「人を雇う会社としての基本ルール」です。

 

  • 勤務時間は何時から何時までにするのか。
  • 休日はいつにするのか。
  • 基本給や手当はいくらにするのか。
  • 給与の締日・支払日はいつにするのか。
  • 昇給・賞与・退職金はどうするのか。

 

初めて労働条件通知書や雇用契約書を作ろうとすると、「まだ決めていなかった」という項目が次々に出てくることがあります。

 

初めて従業員を雇うということは、単に役所へ届出をするだけではありません。

 

これから人を雇っていく会社の土台を作るタイミングでもあります。

 

福岡市南区の倉地社会保険労務士事務所が、法人設立後に初めて従業員を雇うときの準備と手続きを、実務の流れに沿って解説します。

 

※本記事は2026年10月時点の制度を前提としています。

 

1.まず確認|「法人設立時」と「初めて従業員を雇ったとき」の手続きは別です

 

最初に確認したいのが、社会保険の手続きです。

 

法人の場合、従業員を雇っていなくても、役員報酬を受ける代表者などが加入要件を満たせば、健康保険・厚生年金保険の適用対象となります。

 

そのため、

 

「初めて従業員を雇う=その時点で初めて社会保険に加入する」

 

とは限りません。

 

法人設立時に社会保険の新規適用手続きが済んでいるか、まず確認しておきましょう。

 

一方、労災保険などの労働保険は、原則として従業員を一人でも雇えば手続きが必要になります。

 

つまり、法人設立によって必要になる手続きと、従業員を雇ったことによって必要になる手続きは分けて考えることが大切です。

 

2.初めて従業員を雇うなら、まず「会社のルール」を決める

 

従業員を採用するときは、労働条件を明示する必要があります。

 

そのためには、会社として次のような事項を決めておかなければなりません。

 

  • 雇用期間
  • 就業場所・仕事内容
  • 始業・終業時刻、休憩時間
  • 休日
  • 基本給
  • 通勤手当などの各種手当
  • 給与の締切日・支払日
  • 昇給
  • 賞与
  • 退職金
  • 退職に関する事項

 

こうして見ると、労働条件通知書を作成することは、単に書式を埋める作業ではないことが分かります。

 

労働条件を決めることは、その会社の基本的な雇用ルールを作ることでもあります。

 

特に初めての採用では、雛形を先に埋めようとするのではなく、「自社ではどのような働き方にするのか」を整理するところから始めることをおすすめします。

 

3.勤務時間と休日を決めるなら「年間休日カレンダー」まで考える

 

例えば、

 

「勤務時間は9時から18時、休憩1時間」と決めたとします。

 

この場合、1日の所定労働時間は8時間です。

 

しかし、それだけでは会社の労働時間は決まりません。

 

土曜日・日曜日・祝日はどうするのか。お盆休みや年末年始休暇は何日にするのか。

 

こうした休日を決め、年間休日カレンダーとして整理しておくことが重要です。

 

年間休日カレンダーは、残業代の計算にもつながります

 

年間休日カレンダーは、従業員に休日を知らせるためだけのものではありません。

 

月給制の従業員について残業代を計算する際には、1時間当たりの賃金額を確認する必要があります。

 

月によって所定労働時間数が異なる場合、その計算には「1か月平均所定労働時間」が関係します。

 

そのため、

 

1日の所定労働時間

↓

会社の休日

↓

年間休日カレンダー

↓

年間所定労働日数・年間所定労働時間

↓

1か月平均所定労働時間

↓

残業代計算の基礎

 

という流れで考えることができます。

 

例えば、1日の所定労働時間が8時間、年間所定労働日数が240日なら、

 

8時間 × 240日 = 年間1,920時間

 

年間1,920時間 ÷ 12か月 = 1か月平均160時間

 

となります。

 

そして、月給制の場合は、

 

割増賃金の算定基礎となる月額賃金

↓

1か月平均所定労働時間で割る

↓

1時間当たりの賃金額

 

という考え方が、残業代を計算する際の基礎になります。

 

このように、「休日をいつにするか」という話は、実は残業代の計算にもつながっています。

 

annual-holiday-calendar-overtime

 

なお、実際の割増賃金の計算では、すべての手当を含めた月給総額をそのまま1か月平均所定労働時間で割るとは限りません。

 

法令上、一定の要件のもとで割増賃金の算定基礎から除外される賃金もあるため、実際の計算では各手当の内容を確認する必要があります。

 

業種によっては「変形労働時間制の検討」も

 

すべての会社が、毎日8時間・週5日・土日休みという働き方になるわけではありません。

 

例えば、

  • 「土曜日も営業したい」
  • 「月によって休日数を変えたい」
  • 「繁忙期と閑散期で勤務日数を調整したい」

という会社もあります。

 

このような場合には、会社の実態に応じて、1か月単位や1年単位の変形労働時間制を検討することもあります。

 

ただし、変形労働時間制は、単に勤務カレンダーを作れば導入できる制度ではありません。

 

制度によって、就業規則への規定や労使協定の締結・届出など、必要となる手続きや要件が異なります。

 

初めて従業員を雇うタイミングは、今後の事業運営も考えながら、自社に合った労働時間制度を検討する良い機会です。

 

4.決めた会社のルールを労働条件通知書・雇用契約書に反映する

 

勤務時間、休日、賃金などの条件が決まったら、その内容を労働条件通知書に記載し、必要に応じて雇用契約書にも反映します。

 

インターネット上の雛形をダウンロードし、会社名や従業員名、給与額だけを書き換えるのではなく、実際の会社の働き方と書面の内容を一致させることが重要です。

 

また、正社員なのか、有期契約社員なのか、パートタイマーなのかによっても確認すべき事項は異なります。

 

2026年10月からは、パートタイム・有期雇用労働者を雇い入れる際の説明事項にも改正があります。

 

雇用形態に応じて、必要な記載・説明事項を確認しておきましょう。

 

5.将来、正社員化する予定なら助成金も「採用時」に確認する

 

初めての採用では、

 

「まずは有期契約社員として雇い、勤務状況を見ながら将来は正社員にしたい」

 

と考える会社もあります。

 

このような場合、条件を満たせば、キャリアアップ助成金(正社員化コース)を活用できる可能性があります。

 

ただし、助成金は正社員へ転換する直前になってから確認すればよいとは限りません。

 

対象となる労働者の要件だけでなく、雇用契約の内容や正社員転換制度なども関係するため、採用時点から確認しておくことが重要です。

 

また、当初から正社員として雇用することを約束している場合など、制度の対象とならないケースもあります。

 

助成金に合わせて雇用条件を決めるのではなく、まず会社と従業員に合った雇用形態を考え、そのうえで利用できる制度があるか確認するという順番が大切です。

 

6.会社のルールが決まったら、社会保険・労働保険の手続きへ

 

採用条件と入社日が決まったら、必要に応じて社会保険・労働保険・雇用保険の手続きを進めます。

 

代表的な手続きと期限は次のとおりです。

 

主な手続き 提出期限の目安
健康保険・厚生年金保険 新規適用届 事実発生から5日以内
健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届 事実発生から5日以内
労働保険 保険関係成立届 保険関係成立日の翌日から10日以内
労働保険 概算保険料申告書 保険関係成立日の翌日から50日以内
雇用保険 適用事業所設置届 設置日の翌日から10日以内
雇用保険 被保険者資格取得届 資格取得日の属する月の翌月10日まで

 

実際に必要となる手続きは、法人設立時にすでに行っている手続きや、従業員の雇用条件などによって異なります。

 

また、従業員に法定労働時間を超える時間外労働や法定休日労働を行わせる場合には、原則として事前に、36協定(時間外・休日労働に関する協定)の締結・届出も必要です。

 

初めての雇用手続きは「届出の前」が大切です

 

法人設立後、初めて従業員を雇うときは、社会保険や雇用保険などの届出に目が向きがちです。

 

しかし、その前に、

 

  • 勤務時間をどうするか
  • 年間休日を何日にするか
  • 基本給や手当をどうするか
  • 給与の締日・支払日をいつにするか
  • 昇給・賞与・退職金をどうするか
  • 変形労働時間制を検討する必要があるか
  • 将来の正社員化や助成金をどう考えるか

 

といった会社の基本ルールを整理しておく必要があります。

 

そのルールを労働条件通知書や雇用契約書に反映し、そのうえで社会保険・労働保険などの手続きを進める。

 

この順番で考えると、初めての雇用準備が整理しやすくなります。

 

初めての雇用手続きは、書類を役所へ提出するところから始まるのではありません。

 

「人を雇う会社としての基本ルール」を決めるところから始まります。

 

福岡で初めて従業員を雇う経営者の方へ

 

倉地社会保険労務士事務所では、福岡市南区を中心に、初めて従業員を雇う会社の労務管理や社会保険・労働保険の手続きをサポートしています。

 

「初めて従業員を雇うが、何から決めればよいか分からない」

 

「勤務時間や年間休日、給与などの決め方から相談したい」

 

「社会保険・労働保険の新規加入手続きまでまとめて相談したい」

 

「将来の正社員化やキャリアアップ助成金も考えている」

 

という段階でもご相談いただけます。

 

できれば入社後ではなく、採用することが決まり、入社日や労働条件を決める段階でご相談いただくと、必要な準備を整理しやすくなります。

 

初めての従業員を雇うときに決めたルールは、その後2人目、3人目と従業員が増えていく際の労務管理の土台になります。

 

法人設立後、初めての雇用を予定されている福岡の経営者の方は、お気軽に倉地社会保険労務士事務所へご相談ください。

 

「初めての雇用について相談する」