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月60時間超の時間外労働の割増賃金率変更と随時改定

皆さまこんにちは。
倉地社労士事務所の森です。

今回は、2023年4月1日に施行された「月60時間超の時間外労働の割増賃金率の引き上げ」と随時改定についてご案内します。
この法改正に伴い、時間外労働が60時間以上発生して、条件を満たした場合、随時改定が必要となります。

まずはおさらいです。
随時改定の条件は下記3点となります。
①昇給または降給等により固定的賃金に変動があった。
②変動月からの3か月間に支給された報酬(残業手当等の非固定的賃金を含む)の平均月額に該当する標準報酬月額とこれまでの標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じた。
③3か月とも支払基礎日数が17日(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日)以上である。
上記①~③すべての要件を満たした場合、変更後の報酬を初めて受けた月から起算して4か月目(例:4月に支払われる給与に変動があった場合、7月)の標準報酬月額から改定されます。

固定的賃金とは、支給額や支給率が決まっているものをいいますが、その変動には、次のような場合が考えられます。

・昇給(ベースアップ)、降給(ベースダウン)
・給与体系の変更(日給から月給への変更等)
・日給や時間給の基礎単価(日当、単価)の変更
・請負給、歩合給等の単価、歩合率の変更
・住宅手当、役付手当等の固定的な手当の追加、支給額の変更

実務では、残業手当は固定的賃金ではないという認識なので、変動があっても随時改定の対象にはなりません。
しかし、日本年金機構の通達によりますと、支給単価(支給割合)が変更となった場合は随時改定の対象となり、今回の改定は、月60時間を超える残業手当の割増賃金率を50%に変更するものであり、支給単価(支給割合)の変更として取り扱う。
とのことです。
これは条件①を満たすことになります。


ただし、起算月については、月60時間を超える残業手当の支払いの有無に関らず、月60時間を超える残業手当の支給開始月が起算月となります。
これはどういうことかと言うと、例えば、末締め、翌月20日払いの会社で、4月1日~4月30日までの間に60時間超えの残業手当が発生した場合、5月が起算月となります。
一方4月に60時間超えの残業手当は発生せず、5月(6月20日支給)もしくは6月(7月20日支給)に発生した場合でも、起算月は5月となる。ということです。
つまり末締め翌月〇日払いの会社は、すべて8月改定になるということです。

4月、5月、6月のいずれの月においても、月60時間を超える残業手当の支給実績が生じていない場合は、報酬の変更とみなすことができないため、随時改定の対象とはなりません。
また、7月以降に初めて60時間を超える残業手当の支給が発生しても、今回の法改正に関する随時改定の対象とはなりません。
つまり、4月、5月、6月だけ注意してみておけば良いことになります。

少し複雑ですが、算定にも影響してきますので、しっかり理解しておきたい内容です。
ご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。